前回に引き続き、物件選定に重要な「未来における空室率の予測」について考察します。
不動産賃貸業の重要なポイントは、「空室率を少なく、満室に近い稼働を目標とする」と言う点については、誰しも異議は唱えないと思います。
各種セミナーでも、「日本は人口減少で空室ばかりになるので、人口増加が見込まれる海外の物件に投資しよう!」と言うポジショントークが多く見受けられます。
なので今回は、人口減少が叫ばれる中、「未来において、どのくらい空室率が上昇するのか?」について考察してみます。
現状の空室率
まずは、現状の空室率を調べてみました。空室率を調べるにあたり、参考となる指標がありますので、そちらを引用していきます。
1.全体の空室率は、13.5% ※総務省統計局「住宅・土地統計調査2013年」
引用:ガベージニュース「住宅の空き家率は13.5%で過去最高に(2014年)(最新)」
2.賃貸用住宅の空室率は18.8% ※総務省統計局「住宅・土地統計調査2013年」
引用:株式会社価値総合研究所「賃貸住宅市場の実態について」
3.委託管理及びサブリースの平均空室率は、7.2% ※公益財団法人日本賃貸住宅管理協会 日管協総合研究所 2013年下期
引用:『日管協短観』2013年度下期(2013年10月~2014年3月)
※12P「9.入居率・滞納率」の委託管理全体とサブリース全体入居率の平均から空室率を算出。
4.賃貸用住宅の空室率19.0% ※Liful Home’s 見える!賃貸経営 2018年4月9日時点
引用:LIFULL HOME’S 不動産投資 > 見える!賃貸経営
※過去の履歴(2013年当時の空室率)は無かったので、現時点での数値を参考までに引用。
なぜ、指標毎の空室率に違いがあるのか?
上記現状の空室率の中で、気になる点としては、「2.」の総務省調べの賃貸住宅と「3.」の日管協短観の空室率の違いです。
総務省18.8%に対し、日管協短観は7.2%です。その差、11.6%も違ってきます。
この数値から推測できる事は、
①戸数が少ない場合、委託管理をしないで自主管理になる。
②自主管理は、運営能力の低さと戸数が少ない故の交渉力も弱いオーナーが多くを占める為、空室率があがる。
と見ています。
参考までに、オーナーズスタイルさん調べによると、自主管理をしているオーナーの割合は、28%との事。
引用:読者データ
但しこちらは、「1棟以上保有しているオーナーに対してのアンケート」なので、実際は、区分所有のオーナー等含め、約半数近くのオーナーが自主管理だと推測します。
自主管理の空室率は総務省調べの平均より低い
上記数値から推測するに、総務省調べの平均空室率の内訳において、短観が空室率の平均を引き上げ、自主管理が平均を引き下げているはずです。少なめに28%のオーナーが自主管理だと想定し、実際の空室率を想定してみました。
・72%の委託管理オーナーが短観数値の7.2%空室率。
・28%の自主管理オーナーが X% 空室率。
=平均18.8%空室率(総務省調べ)。
結果、自主管理オーナーの空室率(X)は、
23.2%(以上)と想定できます。
取りあえず、空室率を下げたいなら、委託するべし!
と言う結果になります。勿論自主管理オーナーの中には、稼働率高く運営されている方も多くいらっしゃいますが、統計上は、委託した方が良い結果になりそうです。この数値は、未来の空室率においてもダイレクトに影響してくるはずです。要は、現状空室率が高い自主管理物件は未来においてはさらに高くなるという事です。
未来の空室率予測
本題に戻します。株式会社野村総合研究所によると、未来における空室率は、2033年に30.4%になる見通しとの事です。
引用:2030年の住宅市場
委託管理での運用:上昇率を短観の数値に当てはめると、2033年に16.2%
計算式:
①30.4%(NRI2033年空室率全体予測) ÷ 13.5%(2013年総務省空室率全体) =225%(想定上昇率)
②7.2%(短観2013年空室率) × 225% =16.2%(短観2033年空室率予測)
重要な点は、2033年までに、16.2%になると想定して、投資が成り立つかという観点です。
ただ一般的に、家賃相場より安い家賃設定にすれば、空室率を下げる事が可能です。賃貸を借りる際に最も決定要因は家賃です。この家賃をどのくらいに設定すれば満室になるのか?についてはまた別の機会に考察してみたいと思います。
自主管理での運用:2033年に52.2%
計算式:23.2%(自主管理空室率予測) × 225%(想定上昇率) =52.2%(自主管理2033年空室率予測)
半数近くが空室ですね。中々厳しい運営を強いられそうです。。
まとめ
賃貸の空率率が高いのは自主管理だから。委託管理をすれば、そこまで怖くないはず。なので、業者さんが前向きに委託管理してくれそうな場所や区分ではなく棟物(多くの戸数)を保有する事が大事。(あくまで日本全体(マクロ)でのお話)
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