将来、空室率がどのくらい上昇するか予測してみた!②(地域毎の人口減少が空室率に与える影響)

物件運営

前回に引き続き、今回は日本全体(マクロ)ではなく、地域毎のミクロ視点で将来空室率を考察していきます。

本来不動産は、二つと同じものはないので、どこまでをミクロとして考察するか難しい所です。その中でも重要な「どこの地域が良いのか」と言う点に絞って調べてみました。

地域毎(首都圏と地方)の空室率

下記の表は、2018年4月18日時点、ホームズさんの見える!賃貸経営による空室率一覧です。一般的に、首都圏に人気が集中している話をよそに、東京の空室率の低さは2位で、沖縄が1位の低さとなっています。沖縄が地方かどうかは議論が分かれますが、なぜ多くの業者さんが沖縄を進めないのかについては、疑問です。

重要なのは、人口ではなく受給バランス

首都圏に人気が集中しているのは、「人口が多い」及び「今後人口が増えるから」と言う「常識」だと推測できます。ただ私は、人口が不動産賃貸業(稼働率)の成功における「もっとも」重要な要素ではないと考えます。人口よりも重要なのは、「受給バランス」です。

とは言っても、人口信仰の「常識」は本当に合っているのか否か?について、まずは人口と空室率の相関を調べてみます。

人口減少と空室率増加は相関していない?

ニュースでもよく話題にあがる秋田県の人口減少を取り上げてみます。秋田県は全国に先駆けて、人口減少が始まっています。これは将来の「世界から見た際の日本」の縮図と同じと言えるでしょう。

国勢調査によると、秋田県の人口は、2000年の1,189,279人から、2015年の1,023,119人の15年間で、-14%も人口が少なくなっています。この数値は全国でも1位の減少率です。

では、空室率の上昇推移についてはどうでしょうか?

総務省調べの「住宅・土地統計調査」によると、1998年の9%から2013年の12.7%の15年間で、空室率の上昇率は、+3.7%です。(国勢調査と総務省調査時期がずれている為、ほぼ同期間を参考数値として引用)

同期間における、日本全体の空室率の上昇率は、+2%なので、秋田県は平均よりも高い上昇率と言えるでしょう。

しかしながら、一番高い上昇率は秋田県ではありません。一番高い上昇率を誇る県は、

山梨県 +7.2%

です。

ちなみに秋田県の上昇率は、下記の表通り、47都道府県中、同率20位に位置していますので、人口減が空室率上昇と相関が高いとは言えないではないか?と推測されます。

順位空き家上昇率都道府県空き家率
2013
空き家率
2008
空き家率
2003
空き家率
1998
17.20%山梨県22.00%20.30%19.40%14.80%
26.00%愛媛県17.50%15.10%13.70%11.50%
35.60%鹿児島県17.00%15.30%13.10%11.40%
45.10%山口県16.20%15.10%12.60%11.10%
54.90%香川県17.20%16.00%13.90%12.30%
64.70%徳島県17.50%15.90%13.70%12.80%
74.60%新潟県13.60%12.10%10.40%9.00%
84.60%佐賀県12.80%11.10%9.40%8.20%
94.60%島根県14.70%14.90%11.10%10.10%
104.50%長野県19.80%19.30%16.70%15.30%
114.50%高知県17.80%16.60%14.10%13.30%
124.40%群馬県16.60%14.40%13.60%12.20%
134.40%静岡県16.30%14.20%13.50%11.90%
144.40%長崎県15.40%14.10%12.30%11.00%
154.40%熊本県14.30%13.40%11.20%9.90%
164.10%栃木県16.30%15.00%13.50%12.20%
174.00%石川県14.80%14.60%13.50%10.80%
183.90%大分県15.80%14.10%12.70%11.90%
193.80%岐阜県15.20%14.10%13.00%11.40%
203.70%福井県13.90%15.10%13.10%10.20%
213.70%宮崎県13.90%12.30%10.90%10.20%
223.70%秋田県12.70%12.60%10.30%9.00%
233.60%岩手県13.80%14.10%11.50%10.20%
243.60%山形県10.70%11.00%9.60%7.10%
253.60%和歌山県18.10%17.90%17.50%14.50%
263.60%鳥取県14.40%15.40%13.00%10.80%
273.20%三重県15.50%13.20%13.70%12.30%
283.00%富山県12.80%12.30%11.60%9.80%
292.90%青森県13.80%14.60%12.50%10.90%
302.90%北海道14.10%13.70%11.80%11.20%
312.80%広島県15.90%14.60%13.50%13.10%
322.80%福岡県12.70%13.70%11.10%9.90%
332.60%岡山県15.80%14.80%13.00%13.20%
342.40%茨城県14.60%14.60%12.90%12.20%
352.00%滋賀県12.90%12.90%12.70%10.90%
361.80%福島県11.70%13.00%12.30%9.90%
371.80%大阪府14.80%14.40%14.60%13.00%
381.50%奈良県13.70%14.60%13.50%12.20%
391.20%愛知県12.30%11.00%11.50%11.10%
401.10%京都府13.30%13.10%12.70%12.20%
411.00%神奈川県11.20%10.50%10.40%10.20%
421.00%埼玉県10.90%10.70%9.70%9.90%
430.10%東京都11.10%11.10%10.80%11.00%
440.00%千葉県12.70%13.10%12.70%12.70%
45-0.50%兵庫県13.00%13.30%13.20%13.50%
46-0.70%沖縄県10.40%10.30%10.00%11.10%
47-1.70%宮城県9.40%13.70%11.30%11.10%
2.00%全国13.50%13.10%12.20%11.50%

引用:総務省「住宅・土地統計調査1998年~2013年

 

人口減少と空室率増加の相関を単回帰分析して調べてみた

次に、都道府県毎の人口増減と空室率増減の相関を調べてみました。まずは、過去15年の都道府県の人口を調べます。

都道府県人口
2000年
人口
2005年
人口
2010年
人口
2015年
人口増減人口上昇率空き家上昇率
01北海道5,683,062 5,627,737 5,506,419 5,381,733-301,329-5.3%2.90%
02青森県1,475,728 1,436,657 1,373,339 1,308,265-167,463-11.3%2.90%
03岩手県1,416,180 1,385,041 1,330,147 1,279,594-136,586-9.6%3.60%
04宮城県2,365,320 2,360,218 2,348,165 2,333,899-31,421-1.3%-1.70%
05秋田県1,189,279 1,145,501 1,085,997 1,023,119-166,160-14.0%3.70%
06山形県1,244,147 1,216,181 1,168,924 1,123,891-120,256-9.7%3.60%
07福島県2,126,935 2,091,319 2,029,064 1,914,039-212,896-10.0%1.80%
08茨城県2,985,676 2,975,167 2,969,770 2,916,976-68,700-2.3%2.40%
09栃木県2,004,817 2,016,631 2,007,683 1,974,255-30,562-1.5%4.10%
10群馬県2,024,852 2,024,135 2,008,068 1,973,115-51,737-2.6%4.40%
11埼玉県6,938,006 7,054,243 7,194,556 7,266,534328,5284.7%1.00%
12千葉県5,926,285 6,056,462 6,216,289 6,222,666296,3815.0%0.00%
13東京都12,064,101 12,576,601 13,159,388 13,515,2711,451,17012.0%0.10%
14神奈川県8,489,974 8,791,597 9,048,331 9,126,214636,2407.5%1.00%
15新潟県2,475,733 2,431,459 2,374,450 2,304,264-171,469-6.9%4.60%
16富山県1,120,851 1,111,729 1,093,247 1,066,328-54,523-4.9%3.00%
17石川県1,180,977 1,174,026 1,169,788 1,154,008-26,969-2.3%4.00%
18福井県828,944 821,592 806,314 786,740-42,204-5.1%3.70%
19山梨県888,172 884,515 863,075 834,930-53,242-6.0%7.20%
20長野県2,215,168 2,196,114 2,152,449 2,098,804-116,364-5.3%4.50%
21岐阜県2,107,700 2,107,226 2,080,773 2,031,903-75,797-3.6%3.80%
22静岡県3,767,393 3,792,377 3,765,007 3,700,305-67,088-1.8%4.40%
23愛知県7,043,300 7,254,704 7,410,719 7,483,128439,8286.2%1.20%
24三重県1,857,339 1,866,963 1,854,724 1,815,865-41,474-2.2%3.20%
25滋賀県1,342,832 1,380,361 1,410,777 1,412,91670,0845.2%2.00%
26京都府2,644,391 2,647,660 2,636,092 2,610,353-34,038-1.3%1.10%
27大阪府8,805,081 8,817,166 8,865,245 8,839,46934,3880.4%1.80%
28兵庫県5,550,574 5,590,601 5,588,133 5,534,800-15,774-0.3%-0.50%
29奈良県1,442,795 1,421,310 1,400,728 1,364,316-78,479-5.4%1.50%
30和歌山県1,069,912 1,035,969 1,002,198 963,579-106,333-9.9%3.60%
31鳥取県613,289 607,012 588,667 573,441-39,848-6.5%3.60%
32島根県761,503 742,223 717,397 694,352-67,151-8.8%4.60%
33岡山県1,950,828 1,957,264 1,945,276 1,921,525-29,303-1.5%2.60%
34広島県2,878,915 2,876,642 2,860,750 2,843,990-34,925-1.2%2.80%
35山口県1,527,964 1,492,606 1,451,338 1,404,729-123,235-8.1%5.10%
36徳島県824,108 809,950 785,491 755,733-68,375-8.3%4.70%
37香川県1,022,890 1,012,400 995,842 976,263-46,627-4.6%4.90%
38愛媛県1,493,092 1,467,815 1,431,493 1,385,262-107,830-7.2%6.00%
39高知県813,949 796,292 764,456 728,276-85,673-10.5%4.50%
40福岡県5,015,699 5,049,908 5,071,968 5,101,55685,8571.7%2.80%
41佐賀県876,654 866,369 849,788 832,832-43,822-5.0%4.60%
42長崎県1,516,523 1,478,632 1,426,779 1,377,187-139,336-9.2%4.40%
43熊本県1,859,344 1,842,233 1,817,426 1,786,170-73,174-3.9%4.40%
44大分県1,221,140 1,209,571 1,196,529 1,166,338-54,802-4.5%3.90%
45宮崎県1,170,007 1,153,042 1,135,233 1,104,069-65,938-5.6%3.70%
46鹿児島県1,786,194 1,753,179 1,706,242 1,648,177-138,017-7.7%5.60%
47沖縄県1,318,220 1,361,594 1,392,818 1,433,566115,3468.8%-0.70%
全国126,925,843127,767,994128,057,352127,094,745168,9020.1%2.00%

次に、2000年から2015年にかけての人口増減と同期間における空き家率の上昇率との相関性を単回帰分析を用いて調べていきます。

結果、R2の決定係数と言われる「どのくらい当てはまるか?」と言う数値としては、「0.416」と出ました。

これは、「少し当てはまる」と言うレベルです。ニュアンスですと、半分ぐらいは当たっていると言う感じでしょうか。これは、人口減少が空室率上昇と密接につながっていない(完全に相関していない)証左になるかと考えます。(人口減少が全く関係ない訳ではありません)

 

実は、地方都市より首都圏の方が空室率が上昇している

最後に都道府県毎ではなく、もっと狭いエリアで調べていきます。

健美家さんの投稿によると、2008年から2015年における空室率の上昇は地方都市より首都圏都市の方が高い結果になっています。名古屋、札幌、仙台、福岡に至っては空室率が下がっている状況です。非常に素晴らしい内容の投稿なので、ぜひご一読ください。

引用:有望なのは福岡市!エリア格差が拡大する賃貸住宅市場。東京23区、横浜市などでは空室率上昇。

 

この投稿が示す事は、「人口減少ではなく、正しく受給バランスに基づいて、着工(滅失)されているか?」と言う点です。どうやら人口より受給バランスが空室率と相関が高そうです。

この受給バランスの考え方を考慮の上で、個別エリアにおける将来の空室率予測をしていくのが、より正しい予測になるのではと思います。

 

まとめ

大事なのは人口増減より受給バランス。受給バランスが崩れている(いく)物件を高値で買ってしまうとリカバリーが難しい。

 

 

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