生活保護者に入居頂くメリットとデメリット②~メリットと受入れ実践編~

物件運営

前回投稿したデメリットのインパクトが大きすぎてメリットなんてあるのか?と思ってきました。。。

色々と苦難はありますが、それでもデメリットを上回るメリットがあると思っています。

生活保護者を受け入れる4つのメリット

1、成約率(稼働率)の向上

以前投稿したように、生活保護を積極的に受け入れると、通常(1部屋/10部屋中)に比べて8倍(8部屋/10部屋中)の生活保護者の入居が見込めます。

不人気な物件スペック(1Rや駅が遠い等)の場合、一般の方の成約は少なく、あったとしても年に数件の可能性もあります。一方、積極的に生活保護者向けの条件にすることにより、一般の方の成約が少ない状況をカバーする事が可能です。

2、家賃滞納の回避

前回の投稿で、生活保護者の滞納は多いという結果がでました。生活保護と言う趣旨からも滞納に陥るケースは容易に想像できます。

ではなぜ、メリットとして家賃滞納の回避とあげるのか?

それは、区役所による「代理納付」と言う仕組みを利用する事で家賃滞納の回避が可能になり、オーナーからみた際のメリットとなります。

代理納付とは、家賃を本人ではなく、役所を通じて送金してもらう事を言います。

通常、生活保護者は、住宅扶助(家賃補助)分のお金を貰い、そこからオーナー(管理会社)に自ら支払います。にも関わらず、支払いをしない生活保護者が多く、結果家賃滞納になるケースが多く存在します。なので、初月の支払が無い場合は、すぐに役所に相談し、代理納付の手続きを取って貰う事をお勧めします。

ちなみに私の場合、早急に代理納付に移行する判断を伸ばしていた(賃借人を信用していた)為、複数の家賃滞納が発生していましたが、今後は、即座に代理納付に移行する事で家賃滞納のリスクはなくなります。これは、生活保護者ではない低所得者よりも家賃滞納リスクが少ない事を意味します。

3、長期の入居期間

生活保護者は一旦入居すると転居しづらくなります。その結果、長期の入居になります。長期入居によって将来に渡っての家賃の確保ができます。また長期になればなるほど、成約時に支払う広告料(費用)が家賃収入(売上)に対して薄まります。

生活保護者は、基本的に、敷金礼金引越し代に関わる一切の初期費用についても補助を受けられます。初期だけでなく、転居の際の引越し代についても適用されます。

しかしながら、下記参考の通り、引越し代の支給条件を見ても軽々しく引越しできない仕様になっています。 参考:生活保護を学ぼう 転居費用(引越し代・敷金等)

結果的に、引越しをしなくなります。

4、社会的弱者の救済と言うやりがいを持てる

投資やビジネスを行う上で、赤字続きでは成り立ちません。なので、不動産賃貸業であれば、家賃収入を頂く事は前提です。

その上で、誰に貸すか?

と言う判断において、不動産オーナーは選択権があります。どのくらいのオーナーが生活保護者に対して、部屋を貸し出しているか否かについては、調べても出てきませんでした。ただ、入居させる際のデメリットや、私の保有物件に通常の8倍もの生活保護者の方が入居しているという結果から見ると、著しく偏っていると推測できます。

現状、生活保護受給者の過半数が、高齢者です。現時点での調査でも、中高年の約3割の方の貯蓄はありません。高齢者社会において、家を買えない方々の住まいの問題は年々大きくなるでしょう。なぜなら、不動産オーナーは、生活保護者だけでなく高齢者の入居を嫌がる傾向にあるからです。

不動産オーナーは皆、家賃滞納を嫌います(当たり前ですが)。現状、借地借家法上、オーナーではなく、賃借人に有利な権利が付与されています。、オーナーは、家賃滞納リスクの高い賃借人の入居には慎重になります。労働基準法と同じで、中々社員をクビにできない構造と似ています。

結果、家を持てない高齢者、生活保護者と言った社会的弱者の方の住まいは不安定になります。家を選ぶ事ができません。

そんな中、リスクを許容できる範囲で、福祉の仕組みを活用しながら、部屋を貸す事で、社会的弱者を救済できるのであれば、素晴らしい事なのではないかなと思います。

生活保護者を受け入れる際のポイント(To Do)~受け入れの実践~

デメリット、メリットを理解した上で、生活保護者を積極的に受け入れる判断をした場合、次は実践です。私が考えた重要ポイントを明記していきます。

1、管理会社の選定

協力的な管理会社とタッグを組む事が大切です。管理会社によっては、生活保護者や高齢者に対してネガティブな反応をします。理由は簡単で、日々の対応は管理会社さんが行う為、余計な手間は掛けたくないと言う理由です。

であれば、「自主管理で行う」と言う判断もありますが、私はお勧めしません。なぜならば、「大変すぎるし、危ない」からです。その理由は前回のデメリットの投稿を見て頂ければお分かり頂けると思います。

現在お願いしている管理会社が生活保護社に対してネガティブな場合、社会的な意義や、現状の空室率の高さを含めて説得が必要になります。その結果、管理手数料の上乗せ交渉が入るかも知れません。それでも空室よりは満室の方が確実に良いので、計算上の判断になります。何がなんでも進めたくないと言う管理会社もいると思います。その場合は、再度、管理会社を探す必要があります。

2、生活保護者向け適性家賃(パッケージ)の設定

何度も投稿していますが、地域毎に設定されている生活保護の住宅扶助額に合わせて家賃設定する事が大切です。現在の札幌市の単身の場合は、月額36,000円です。

これから物件購入する場合は、住宅扶助額を調べた上で物件選定する事も大事です。

3、事故・孤独死対象保険の加入

生活保護者の自殺率は通常に比べて2.2倍~5.5倍です。通常の方より高いですが、全体の分母(自殺数)から鑑みると多い数値ではないと判断しています。ただ、私の場合は、生活保護者だけでなく高齢者の入居も積極的に行っている為、リスクコントロールの一環として、専用の保険(東京海上)に加入しています。参考:2017.12.13 東京海上日動「家主費用・利益保険」 孤独死対応商品に反響

簡単に説明すると、事故や孤独死が起きた場合、多額の修繕費用について補填され、機会損失した家賃収入も補填される保険になります。保険料について、安いと思うか高いと思うかは人それぞれですが、13部屋、一部屋の家賃36,000円の物件で、大体20年間で60万円程です。(年間約3万円)

1回でも事故が起きると100万ぐらいの修繕や、年間機会損失が36万円ある事を考えると決して高くない保険料だと思っています。20年間無事故だったら、より幸福だったと思いますしね。

ただ、本当に事故が起きるか否かについては、今一度生活保護者の自殺だけではなく、孤独死が起きる可能性含めて後日考察しますので、ひょっとしたら保険加入する必要ないという結果になるかも知れません。

この項目で大事な事は、

1、おそらく、保険会社による事故・孤独死の発生確率は平均をとって算出しているはず。

2、毎年支払う保険料額の条件に、通常の方と生活保護者の方で分かれていない。

3、よって、自殺率の高い生活保護者を積極的に入居する上では、保険加入しておいた方が危険負担を転嫁できている(お買い得)言える。

という大まかな根拠によるおすすめです。

4、不動産仲介店舗への認知活動

生活保護者を積極的に受け入れているオーナーおよび物件は多くないので、積極的に仲介店さんにPRする事が必要です。なぜなら、仲介店・担当によっては、生活保護者が来た時点で、やんわりと退店を即すケースがあるからです。理由は、せっかく候補物件を見つけても、オーナーが反対したり、保証会社からNGが出やすかったりして、それまでの対応努力(時間)が無駄になってしまうからです。

そんな中で、積極的に生活保護者を受け入れている物件は仲介店・担当にとって、非常に紹介しやすいと言えるでしょう。困った時にはあの物件を紹介!というまさしく最後の砦です。

私の場合は、物件近隣の仲介店さんに年に2回ほど、手土産持参で挨拶周りして認知活動しています。

5、不動産仲介店舗での事前確認事項

生活保護者で住宅扶助を受給している場合、これから受給予定の場合、やんわりと「受給(生活保護)理由」をヒアリングして頂きます。

受給理由は、「精神疾患・うつ」の場合、やんわりと契約は見合わせて頂きます。前述した社会的弱者の救済をあげておきながら、見合わせるのかよ?という一見矛盾をはらんでおりますが、あくまで、精神疾患・うつの生活保護者は、不動産賃貸業の許容範囲を超えるリスクと考えています。

なぜなら、

①1年以内に退去する可能性が高い(逮捕・入院)

②隣人に迷惑をかけ、事件が発生する可能性が高い(奇声や奇怪な行動)

③部屋の利用状況が悪い(ガラス等一部破壊されている)

④自殺率が高い

からです。上記①~③については、1年運営した結果の経験則です。1年で退去されてしまうと広告料負担割合が大きくなってしまいます。また(強制)入院になると、住宅扶助もなくなりますので、家賃滞納が発生します。さらに退去時における賃借人責任による修繕費用をお金が無いので負担できない事象が発生しました。

④については、生活保護者の自殺の中で、66%が精神疾患・うつによる自殺です。

出展: 6 精神疾患の有無別自殺者数

特に30代(若年)の生活保護者は精神疾患・うつによる需給理由が多い為、よりリスクが高い(通常の人の5.5倍の自殺率)事は前回のデメリット編でも述べました。

生活保護者の中で、精神疾患・うつの方の割合は15%なので、残りの85%の方を対象にした方が良さそうです。

まとめ

統計と経験則と社会福祉の仕組みを駆使して、一部の生活保護者に入居頂く事は、経営上もプラスで、社会的意義もある事である。精神疾患・うつの方に対しては、現状と違う福祉支援の仕組みが必ず必要で、考察・提言していきたい。

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