投資用不動産を購入する際、色々な指標や感覚を持って購入判断をしています。10年ぐらい勉強(不動産賃貸業)をしている中で、「かぼちゃの馬車物件」を購入しない程度のリテラシーは保有していると自負しています。
しかしながら、ずっと心の中で、モヤモヤしているのは、
「自分の判断は、本当に正しいのか?単なる感覚(あてずっぽ)なのではないか?」
と言う事です。
なので今回は、今一度、購入判断のプロセスについて考察してみます。
ちなみに今まで物件を購入した際に必要な基本的指標は、以前投稿した「不動産投資本を100冊以上読んだ私がおススメする厳選5冊」で記述した書籍等により養っておりますのでご参考ください。
投資用不動産の選定は未来予測と同じ
金融商品の投資と比べ、長期運用となる投資用不動産においては、未来予測を正しく行う必要があります。
まず購入時点の物件価格、積算価格、利回り、空室率等は開示されている、もしくは、調べればわかります。ただ重要な点としては、「未来におけるそれらの変動」を予測する事です。
予測により、「利回りが高い物件を買ったが、売るときは物件価格が大幅に下がってしまった」と言う想定外の状況を回避する事が可能です。(かぼちゃの馬車問題みたいな物件ですね)
重要なポイントは、
「購入時点で、未来(売却時点)において、どのくらい家賃を稼ぎ、物件価格がどのくらい下がるか(上がるか)を想定しておく事」
です。利回りが高ければ、家賃収入が多く見込めます。売却時までの家賃合計が売却損を上回れば、その投資は少なからず成功と言えるでしょう。
上述している内容は、勉強されている方であれば、至極当たり前の話だと思います。しかしながら、投資用不動産情報は毎日のように配信されており、その何百件という中から
「比較した上で、この物件は買いである」と「迷わず、素早く判断できる」事大切だと考えます。
投資用不動産を選ぶ際、数多くの項目の中から組合せて購入判断する必要があります。
「構造、間取り(設備)、エリア、融資有無、最寄駅までの移動手段と時間、築年数、積算、利回り等々」
私が取るポジショントークの話ですが、これら無数の組合せから最良な組合せを考えました。(あくまで私のポジショントークでありますが、私は現時点で物件仲介をしていませんし、購入ライバルが増える事を意味するので、開示する事にはメリットはありません。ただ開示しても影響が少ないと考えているから記述しています。)
投資用不動産の購入条件
次は、購入判断に必要な条件と将来予測の仕方について記述していきます。あくまで現地調査(空室率チェック)と言ったミクロの調査ではなく、投資用不動産情報を見た際に判断できるマクロの調査です。
1.利回りを10%以上とする
2.価格の9割・25年以上の期間でローンを受ける
結論から申し上げますと、「利回りが高くて、ローンがおりそうな物件」のみ検討候補にしましょうという話です。
どんな不動産であれば上記条件を満たせるか?と言う視点で探す事になります。
それにより、数多くの物件情報から購入候補が絞られます。自然と物件のスペックも下記のようにほぼ決まってきます。
エリア:地方(できれば地方都市)
構造:RC
築年数:25年以下
物件価格:(できれば)積算価格>=物件価格
不動産投資手法において、地方高利回り派や都心中心派のオーナーがいますが、私は地方高利回り派に属していると考えます。物件購入の際、積算価格と対でいくら融資が降りるかの話がついて回りますが、総じて「利回りが高い」=「積算価格が高い」可能性が高いですので、自然と融資してくれる金額も多くなります。
なお、最終的な物件購入判断は、内覧や近隣の空室率等々、ミクロに調査する必要はありますが、まず上記の条件で殆んど物件を振るいに掛けていきます。
なぜローンで投資用不動産を購入する事が重要なのか?
それは、投資効率を高める為です。
シュミレーションソフト(エクセル)を用いて、税引き後利益の投資対効果について調べてみました。
投資効果の分母に用いる数値は、「自己資金」です。元手がどのくらい増えたかと言う点が重要です。
なので、投資効果の分母に用いる数値は「自己資金」。分子に用いる数値は、「税引き後利益と売却益の合計」です。(売却益については、物件価格の下落が無いと「一旦」仮定した上で、ローンの元本返済分がそのまま売却益として計算しています。)
それにより、年間利回り(投資効率)が分かってきます。
下記に物件表面利回りと自己資金を何割投入した場合の年間利回り(投資効率)をマトリックスにしてみました。
物件表面利回り/自己資金 | 1割 | 2割 | 3割 | 4割 |
6% | 28% | 14% | 10% | 8% |
7% | 34% | 18% | 12% | 10% |
10% | 54% | 28% | 12% | 15% |
12% | 68% | 34% | 23% | 18% |
15% | 88% | 44% | 30% | 23% |
- 条件
物件価格:1億
土地建物割合:4:6(4,000万:6,000万)
利回り:6%~15%
自己資金:1割~4割
構造:RC(1,000㎡)
ローン残存年数:25年
空室率:5%
諸経費:3.13%(保険、広告料、電気、税理士 ※固定資産税は別途計算済)
PM費:3%
所得税:25%
売却時期:購入から10年後
売却価格:購入時と同じ価格(仮置きの係数として)
やはり、ローンの割合が多ければ多いほど(自己資金が少なければ少ないほど)、投資効率があがります。上記数値は「投資元本に対する1年あたりの利回り」です。
例えば、表面利回り15%の物件を1割の自己資金で購入すると、自己資金(1割分)に対し1年で88%、10年で880%回収(増加する)という計算になります。
1点、ローンの期間を長く取る事(25年)ついては、投資効率における影響はそこまで大きく(重要では)ありませんが、できるだけ手元のキャッシュフローを厚くし、次の物件を買う際の自己資金を早期に貯める為の戦略です。
なぜ首都圏の投資用不動産は投資として適さないのか?
それは、ずばり投資効率が悪いからです。
楽待等に載っている首都圏物件の多くは、表面利回り6~7%です。なお且、公示地価に対し、高額で取引されています。その為、銀行が算定する積算評価と物件価格との乖離が大きい状況(積算価格<物件価格)です。そうなると、ローンが多く下りない為、多額の自己資金を投入しなくてはいけなくなります。
上記の表を見ると、自己資金3割を入れて、物件利回り6~7%の物件を購入してしまうと、投資効率は10~12%になります。残念ながら思ったより全然儲からないですね・・・。
この投資効率では、「他の投資商品の方が良い」という結果になります。私は、FXを外貨定期預金として、南アフリカランドドルをドルコスト平均法でレバレッジ(借金)2倍(=自己資金5割)で購入しています。レバレッジ2倍という事もあり、年間利回りは約11%にもなります。
なお且、上記表の条件は、売却時においての物件価格下落を(まだ)織り込んでいないので、最終的な投資効率は私が取っているFXポジションよりも悪くなる可能性があります。
「でも地方だと人口減少の影響を受け、空室率が高くなるのでは?」
などのご意見を多数いただきそうです。
ただ統計上、空室率の違いは、東京と地方で5~10%程度です。その空室率をのぞいた実稼働率で投資効率を計算していけば、地方に軍配が上がります。(未来においての空室率変動も計算に入れなくてはいけませんが、地方都市であれば、現状(5~10%)と大きく変わらないと言う仮説を持っています。そちらについては、別の機会に考察します。)
次に気になるのは、物件価格の下落だと思います。地方物件だと、より気になる所でしょう。前述までに投資効率の考え方がわかったので、次からは「売却時における物件価格下落をどのように調べれば良いか?」について記述してみます。
投資用不動産の将来価値調査
不動産の将来価値を予測する事は非常に難しいです。人口減少や投資環境等により色々な専門家も含め諸説ありますが、マクロな話であり、業者のポジショントークとして挙げられている可能性もあり、「マクロの話ではなく、購入を検討している『この物件』の将来価値はどうなの?」という問いについては、誰も答えてくれません。
そこで、私なりに『この物件』における将来価値の算出方法について考えてみました。
1.過去20年分の公示地価推移の係数を調べる
土地代データ等のサイトにて過去の公示地価推移を調べる事ができます。
例えば埼玉県川越市の場合。(川越市は地方ではなく、首都圏ですが)
この期間から、現在から過去20年間を抽出してみます。(過去すぎる数値や、バブル期は特異値とみなし、抽出期間より外します)
・1997年[平成9年] 29万2836円/m2
・2017年[平成29年] 16万1068円/m2
次に、20年間でどのくらいの公示地価が上がったか下がったかを調べます。
161,068/292,836=55%
つまり、20年間で‐45%地価が下がっている!と言う事を意味します。
かなり下がっていますね。ただこの価格低下は日本中の大半の地域で起きているのが現状です。
最後に1年あたりの公示地価変動係数を算出します。
‐45%/20年=‐2.25%
この係数を将来の売却時期に掛けてあげれば将来価値の算出できます。
例えば、10年後に売却する場合、土地はー22.5%下がっているといると予測できます。
2.近似物件(エリア)の売却平均利回りを調べる
次に参考となるのが、現状での売買価格(=物件表面利回り相場)の調査です。この指標については多くの書籍でも掲載されているので、目新しい方法でもないですが、一つの参考になるでしょう。
例えば、築20年のRC1億円、表面利回り10%(家賃収入1千万円)を購入したとします。それを10年後に売却する場合、楽待等のサイトにある近似物件の「築30年」が12%で売られていれば、10年後における物件価格下落分はー1,666万円になります。
家賃1,000万円÷12%=築30年の物件価格8,333万円 ‐ 築20年の物件価格10,000万円=‐1,666万円(‐16.6%)
※家賃下落は購入時点ですでに築20年の為「変動無し」と想定し、10年後も同じ家賃と仮定する。
調査方法1と2のどちらを参考とするかは難しい所です。1は積算方法に重きを置き、2は収益還元法に重きを置いています。
どちらを参考とするかの判断基準として、私の場合、10年後に売却という短期計画の場合は、2の収益還元法、とことん長期で保有して、更地にして売却する場合は、1の積算方法を参考指標として取り入れる事にしています。
投資効率と将来価値の調査結果
上述した購入条件と調査方法により、賃貸業をしている期間の投資効率と将来売却した際の売却益(損)が分かるようになりました。
最後に、その両者の合計で投資が成功したか否かの結果を予測できます。
1.10年後、投資用不動産として売却したケース
仮の設定としては、下記とします。
・1億円の物件、築20年
・表面利回り10%、自己資金1割
・10年後売却 ※将来価値の算出には収益還元法を参考指標とする。
結果は1,000万の自己資金に対して、
- 税引き後利益の期間総額=5,400万円
- 売却損=1,666万円 ※利回り12%(10%→12%)で売却できたと想定
- ①‐② = 3,734万円のプラス。(年換算利回り=37% ※3,734万÷10年÷1,000万)
になります。
2.25年後、更地として売却したケース
仮の設定としては、下記とします。
・1億円の物件(土地4千万、建物6千万)、築20年
・表面利回り10%、自己資金1割
・25年後更地にして売却
結果は1,000万の自己資金に対して、
- 税引き後利益の期間総額=13,500万
- 更地化にする為の経費=1,000㎡(5坪)× 坪5万= 1,513万
参考:土地を更地にするにはどれだけ費用・コストがかかる?建物解体の注意点
- 賃借人の転居促進の経費=半年分家賃=500万
- 結果、①-②-③=11,487万のプラス
- 更地(土地)の売却益:25年×‐25%=‐56.25%。土地4,000万×‐56.25%=1,750万
- 最終結果、13,237万のプラス。(年換算利回り=53% ※13,237万÷25年÷1,000万)
単純計算ではありますが、結果どちらのケースもプラスになりましたので、この投資は成功と言えるでしょう。後は、資産の組み換え等による理由で早くイグジットするかしないかという判断になるかと思われます。
上記計算方法を用いる事で、リスクの高いと思われる地方高利回り物件と首都圏の物件をシンプルに比較でき、どちらの方がより良い投資になるかの予測数値を算出できるようになります。
まとめ
感覚や業者のポジショントークだけを信じるのでなく、数値を用いて自ら将来を予測する事が大切。首都圏でも16号線沿い沿い物件と地方都市物件の土地減価率はほぼ同じなので、利回りが高い地方都市物件の方が、投資効率は良くなる。
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