生活保護の住宅扶助上限と家賃が近いと成約数が上がる!

物件運営

生活保護の住宅扶助上限に近い家賃だと、賃貸契約の成約数が上がる事が分かりました。

 

保有している札幌市中央区物件と手稲区物件の年間成約数に著しく違いがあり、散々仮説検証して出た結論になります。

まず、札幌市の中央区と手稲区がどこにあるか?札幌市の地図と手稲区と中央区に色付けしています。

中央区は、言わずと知れた札幌市のど真ん中で、ビジネスの集約地です。土地値の平均も他区と比べると高額です。

人口:243,105人(世帯数:137,439世帯。世帯人数:1.8人)

※平成30年11月1日時点

 

一方手稲区は、中央区から見て左上、札幌市の中でも北西に位置します。西側に隣接している自治体は小樽市になります。

人口:141,914人(世帯数:59,264世帯。世帯人数:2.4人)

※平成30年11月1日時点

札幌市は「市」と言え、面積は東京23区の1.8倍あります。ただ、南区の山岳・森林地域が多くを占める為、それらを除くと23区とほぼ同じとイメージできます。

ちなみに中央区と手稲区の距離は、大体、世田谷区と練馬区の距離です。

物件スペックの比較

まずは両物件の主なスペックを記載します。

項目\物件中央区物件

手稲区物件

築年数築30年築32年
構造鉄骨造木造
間取り&面積1R(13部屋)約18㎡1R(20部屋)約18㎡
家賃家賃36,000円(水道料込)家賃31,000円(水道料込)

※半期で33,000円→29,000円に値下げ

最寄駅への距離円山公園駅(地下鉄)徒歩7分手稲駅(JR)徒歩10分
広告料(※1)15万円(4.16倍)12.5万円(4.03倍)
空室率(※2)22.8%19.8%

※1 広告料は双方ともに、地域で高いレベルの金額に設定しています。

※2 空室率 出展:LIFULL HOME’S 不動産投資 >  見える!賃貸経営 >  北海道・東北 >  北海道 

重回帰分析による適正家賃分析

ご承知の通り、物件は一つとして同じ物はありません。物件により、成約の難易度が異なりします。言い換えると物件毎に「需要」が異なります。

需要の違いにより「家賃」が決まってきます。例えば、同じエリアでも新築の家賃が高く、築古の家賃は安くなります。

では、その「需要」=「家賃」をどのように決めればよいか?

一般的に、重要視する方法は、類似(競合)物件との比較です。

類似物件との比較をする際に、重回帰分析を用いて、両物件における適正家賃を算出していきます。

重回帰分析の結果

項目\物件中央区物件

手稲区物件

適性家賃33,934円32,139円
設定家賃36,000円(水道料込)31,000円(水道料込)
実質水道料金-2,000円-2,000円
補正後設定家賃34,000円29,000円
適性家賃との乖離額 66円割高 3,139円割安

仲介店経由の年間成約数は?

下記は2017年10月~2018年9月の1年間あたりの成約数です。

・中央区物件:10部屋

・手稲区物件:5部屋

その差は2倍でした。

なぜ成約数に違いがあるのか?

重回帰分析を元に家賃設定している場合、両物件の成約数に差は出ないはずです。むしろ適性家賃より低めに設定している手稲区物件の方が、成約数が多くなるはずです。

ではなぜ手稲区物件の成約数が中央区物件より半分も低いのでしょうか?

 

それは、中央区物件が、「生活保護の住宅扶助上限の家賃の為、成約が多い」と考えられます。

 

成約数における生活保護者の割合

・中央区物件:8部屋/10部屋中(80%)

・手稲区物件:1部屋/5部屋中(20%)

中央区物件の生活保護者成約数が群を抜いています。

一方、生活保護者以外では手稲区物件の方が多い

・中央区物件:2部屋/10部屋中(20%)

・手稲区物件:4部屋/5部屋中(80%)

相場より3,139円安い手稲区物件の方が、中央区より2倍の4件成約しています。中央区物件は、相場とほぼ同じで66円高いだけなので、2件しか成約していません。

見方を変えると、中央区物件の成約数が少ないのではなく手稲区物件の方が「多い」とも言えます。なぜなら中央区物件は適性家賃とほぼ同額なので。この考察については後日投稿します。

札幌市の生活保護世帯数の割合は?

前述より、生活保護者が、成約数を押し上げている事が分かってきました。と言うよりも、札幌市中央区の景気がヤバ過ぎる事になっているのでは?という懸念もあがってきます。

そこで、札幌市が公表している生活保護世帯数を見てみます。

○札幌市生活保護の状況
区 分市 計中央区手稲区
常住世帯932,808134,00257,869
被保護世帯54,3066,7982,414
保護率(%)5.8%5.1%4.2%

この数値からさらに、「借家」における生活保護者世帯数の割合を算出していきます。なぜなら、生活保護は原則「資産(持家)」を持てないので、借家にしか住むことができないからです。

 

札幌各区(両物件)の持ち家(借家)比率は?

・中央区:39%(61%)

・手稲区:65%(35%)

参考:札幌市の人口-平成27年国勢調査結果報告書- 第41表(「住宅に住む一般世帯」内での割合を算出)

と言う結果になりました。同じ札幌市にも関わらず、持ち家比率に大きく差がありますね。

札幌各区(両物件)の借家における生活保護世帯数の割合は?

区 分市 計中央区手稲区
常住世帯932,808134,00257,869
借家比率51%61%35%
借家世帯475,73281,74120,254
被保護世帯54,3066,7982,414
保護率(%)11.4%8.3%11.9%

となりました。中央区は札幌市の都心部で、借家比率は多いけれども、他区と比べて裕福であると分かります。

平均で、借家の10戸に1戸は生活保護者世帯

上記より借家10戸に約1戸(約10%)は生活保護者世帯が入居しているという結果になります。なので賃貸契約成立数も同じ割合で決まるはずです。

それに対して、中央区物件の年間成約率の生活保護者世帯数割合は80%です。すでに8倍の差がありますので、平均から著しく乖離していると言えるでしょう。

ちなみに、中央区物件全居住世帯数の内、生活保護世帯数割合は、85%になります。ほぼ生活保護者の為の物件です。

一方で、手稲区物件全居住世帯数の内、生活保護世帯数割合は、17%なので、平均より少しだけ高い状況です。

札幌市の住宅扶助は単身で月36,000円

現在、札幌市の生活保護世帯で住宅扶助上限は、単身で36,000円になります。

それに対して、中央区物件の家賃設定は同額。手稲区物件は、家賃設定の方が5,000円も低い状況です。住宅扶助は補助金ですので、5,000円余ったとしても、他に使用する事はできず、差額分を貰える事もありません。

なので、普通の人であれば、「できるだけ住宅扶助上限額に近い賃貸物件に住みたい」となります。なぜなら相対的に家賃の高い物件の方が、アクセスが良い、広い、新しい等の優良スペックになるからです。

上記により、両物件の年間成約数に差が生じたと考えられます。

生活保護者の入居付け戦略について

住宅扶助上限での受け入れは非常に有効な手段だと分かりました。

しかしながら、現実的には全物件を上限額に設定する事は難しいでしょう。仮に上限額に合わせて適性家賃より無理やり高く設定すると成約が少なくなるでしょう。

住宅扶助上限を上手に活用した戦略を考えてみます。

住宅扶助上限額に近い家賃設定の物件を買う

これが一番大事だと考えます。住宅扶助上限を意識する事の大切さが必要です。

また将来、住宅扶助額は削減されていくと推測できるので、それに耐えられるレベル(予め計算の上)で購入する事が大事だと思います。

各種無料付帯し、家賃設定を住宅扶助上限額に近くする

私の手稲区物件のように既に購入済で、適性家賃が上限額よりも低い場合、工夫が必要です。

まず管理料・電気・ガス代は住宅扶助対象外になります。水道光熱費の月間上限設定が無い自治体は勿論の事、民間企業で上限設定をしている所は多くありません。

無料付帯の施策を考えてみました。施策に掛かった費用を家賃に上乗せ、住宅扶助上限額に近く設定する方法を取ります。

・家具家電付にする

・大規模リノベーションをする

・ネット無料にする

※ただし、各施策が住宅扶助対象として認められるか否かについては、開示されておらず確約はできません。

色々な無料付帯施策が可能で、組合せも自由です。思考を巡らせ色々と実施していこうと思います。但し現状、空室が多い状況である事が実施するか否かの判断になると思います。無料付帯し家賃に転嫁するにしても、費用は掛かります。利益率も著しく上げる事は相場の問題から難しいでしょう。あくまでも「空室が多い場合、成約数を高める為の施策」、「早く満室にしたい時の施策」と位置付けると良いと思います。

まとめ

住宅扶助上限を意識して物件を購入した方がよい。

 

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